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月9『ラヴソング』放送終了  社会に認知が広がってほしい吃音(きつおん)

フジテレビで放送中の月9ドラマ『ラヴソング』が2016613日に最終回となりました。「吃音」(きつおん・(どもること))を持った人、佐野さくら(藤原さくら)が登場したことはとても大きな反響につながりました。吃音者が感じる困ったこと、吃音者あるあるがとても多く盛り込まれ、藤原さくらの目を見張る演技力で本当の吃音者がドラマに出ているのではないだろうかと錯覚するほどでした。筆者は第1話から最終話までを視聴しましたが、これほど丁寧に吃音を描いた作品はあっただろうかと驚いています。

 

ドラマ放送開始により吃音当事者や吃音ドクターこと菊池良和医師を取材したニュース、発達障害の子どもの親・保護者向けの情報交換をするポータルサイトなどで吃音のことが積極的に取り上げられるようになりました。TwitterFacebookといったSNSサイトでも吃音の話題が活発になりました。そして何よりも吃音当事者の反響が大きくありました。

 

 

 

佐野さくらの吃音は佐野さくらの吃音

吃音者は十人十色であること

 

 

ドラマでは佐野さくらという人物の吃音が表現されました。このドラマを見て「吃音とはこういうものか、こうやって喋るのか」と納得してしまう一般視聴者がいるのではないかと筆者は心配しています。

 

今回のドラマで筆者が心残りなのはフジテレビのラヴソング公式ページに掲載されている『このドラマには、設定として吃音(きつおん)を持った人物が登場しています。ドラマの登場人物の性格、行動は、ストーリー上創作したものです。また吃音にはさまざまなタイプがありますので、吃音を持った人が全て登場人物のような吃音のタイプや、性格、行動をしているわけではありません。また、吃音があることにより学校や社会で困っている人もいます。もし、みなさんのまわりで話しづらそうにしている人がいたら、まず耳を傾けていただくなど、理解と配慮をお願いいたします。』という重要な文章がドラマのオープニングまたはエンディングで放送されなかったことです。

 

吃音者は本当にひとりひとりそれぞれ異なるということは筆者の記事201651()「<当事者が語る>フジテレビ「ラヴソング」でドラマ化されたリアルな吃音(きつおん)」でも指摘したことですが、これは毎回必ず放送してほしかったと残念な気持ちです。

 

ドラマを見た吃音当事者の意見や感想もSNSに流れています。「これだけが吃音だと勘違いされたくない」、「私の吃音とは違う」などです。

 

 

ドラマをきっかけに吃音の認知は広まるか?

メリットは? デメリットはないの?

 

 

ドラマの放送開始直後からSNSやブログなどに吃音当事者の悲痛な叫びも見受けられるようになりました。例として「このドラマが放送されたせいで、明日、学校・職場で私の吃音のことを指摘されたらどうしよう?」、「今まで必死に吃音であることを隠してきたのに私はこれからどうすればいいの」、「職場から吃音の指摘をされて障害者手帳を取得してこいと言われないだろうか」、「吃音があるけど就職活動のときに相手側に悟られないだろうか」などがありました。

 

筆者もこれは大きな問題だと強く思います。ドラマを見て一般視聴者は吃音者とはこのような喋り方をするのだなと記憶をしたはずです。ドラマ以外にも「吃音ラジオ」という吃音当事者が出演するラジオがYouTubeに公開されています。悪意のある人間が「これが吃音者の喋り方です。話し方です」分析した内容をもとに吃音者の発見方法を勝手に作り出して販売をするかもしれません。実は現在、精神障害者や発達障害者を発見する採用試験なるものが販売されています。就職活動で応募してきた人間が障害者ではないかを調べるのです。今後これと同様の吃音版が世の中に流通するのではないか? またはすでに存在しているのではないか? と筆者はとても心配しています。筆者はこのような就職活動のときに応募者の病気や障害の有無を調べる採用試験は障害者差別解消法に抵触するのではないかと思います。日本政府が率先して指導して根絶していかなければならないと考えています。

 

一方で吃音のことがドラマで取り上げられ、吃音が2005年から発達障害者支援法に定義されている障害であるということが社会に広まったことはとても大きな進歩です。ドラマのように人生が上手くいかなかった吃音当事者者もいるでしょう。発達障害者支援法に定義されているため希望すれば精神障害者保健福祉手帳を取得できるのです。現在、吃音が原因でひきこもりになっている人、生きることが辛い人、一応働いているけれども吃音があって大変で困っている人などは障害者手帳を取得できるのです。

 

官民問わず企業団体の総務・人事・労務・採用担当部門で働いている方には『障害者手帳を持っている吃音者も存在する。吃音は発達障害者支援法に定義されており法定雇用率に計算できること』これを覚えてほしいと願っています。吃音者への合理的配慮はどうしたらいいのか、まだ明確なガイドラインはありませんが吃音当事者とよく話し合ってほしいと思います。

 

ドラマの放送でそれ以前よりは「吃音」という言葉が社会に広まりました。しかし今回のこのドラマのみで吃音という言葉が広まって終わりにならないように吃音当事者やその家族で声をあげることができる人は積極的に情報発信していくべきだと思います。今回のドラマ放送に合わせて吃音を取り上げてみようとさまざまな立場から考えている人が出てくると思います。吃音があって困っていること、こうしてもらえれば嬉しい、ここはこう助けてほしい、配慮してほしいなどの情報を伝えていけば、それに応えて向き合ってくれる人々が増えていくと思います。

 

 

 

<参考サイト一覧>

 

◆内閣府 政府広報オンライン 発達障害って、なんだろう?

http://www.gov-online.go.jp/featured/201104/

 

◆発達障害者支援法 200541日施行

http://law.e-gov.go.jp/htmldata/H16/H16HO167.html

 

17文科初第16 厚生労働省発障第0401008号 【第2 法の概要 (1)定義について】 200541

 

http://www.mhlw.go.jp/topics/2005/04/tp0412-1e.html

月9『ラヴソング』で取り上げている吃音(きつおん)本当は発達障害者支援法に含まれている吃音

 フジテレビで月9ドラマ『ラヴソング』が放送されています。「吃音」(きつおん・(どもること))を持った人、佐野さくら(藤原さくら)が登場しています。ドラマでは吃音を持った女性が吃音と向き合いながら、様々な人物と触れないながら成長していく様子が描かれています。ドラマでは佐野さくらが音楽の才能を開花させ、神代広平(福山雅治)と曲作りをしているところが描かれています。このドラマは筆者の推測ではありますが、オーストラリアの吃音女性歌手メーガン・ワシントンのTEDから着想を得て制作しているのではないかと考えています。ドラマでも同じようなエピソードが出てきます。

 

メーガンのTEDでも「水曜日が言えない 火曜日の次の日」と言い換えをしていること、「私はいつも酔っ払っているように」思われていること、「自分の名前を忘れてしまったの?」と思われること、「スムーズスピーチと呼ばれる」テクニックを利用していること、「テレビ番組に出なければならない時やラジオのインタビューを受ける時」 テクニックを使っていること、「放送時間の節約は一番重要ですからね (笑)」などを話していました。吃音の悩みは世界中どこでも似ているのかもしれません。

 

ラヴソングで吃音が取り上げられてから吃音のことを調べた人もいると思います。このドラマを見て「自分も吃音ではないだろうか?」と考える人、「子どもが吃音かもしれない」と考えた親御さんもいるでしょう。2016年5月6日の記事「<月9ドラマ『ラヴソング』>障害者差別解消法から見た吃音者への合理的配慮とは?」を読み、「吃音は障害者なの?」と疑問に思った人もいるでしょう。ドラマやTEDでは音楽という可能性の一端も示されました。しかし全ての吃音者がそのような選択をできるか、人生を歩めるかは誰にもわかりません。色々な選択肢があります。

 

 

2005年から吃音は発達障害者支援法に定義されていた

しかし世の中に浸透していなかった…

 

 

2005年4月1日施行の発達障害者支援法を確認すると、法律本体の他に2005年当時の文部科学省と厚生労働省の連名事務次官通知が出されています。「17文科初第16号 厚生労働省発障第0401008号」という通知文です。この通知文で発達障害者支援法の対象になる障害を明確に定義しています。

通知文によるとWHO(世界保健機関)が公開している、ICD-10(疾病及び関連保健問題の国際統計分類)に分類されている「Fxx番」の障害を法律の対象にすると書かれています。ということは2005年から吃音(F98.5)は発達障害者支援法に定義されていることになります。2014年から2016年に発達障害者支援法改正の関連ニュースの中で「つい最近、吃音やトゥレット症候群が新しく追加された」という誤認させるような書き方をする記事もありますが2005年から法律に定義されています。

 

この通知文の宛先は「各都道府県知事」、「各指定都市市長」、「各都道府県教育委員会教育長」、「各指定都市教育委員会教育長」、「各国公私立大学長」、「各国公私立高等専門学校長」となっています。この宛先に通知されているとなると、自治体の障害福祉課などの窓口やハローワーク、教育現場の職員は吃音が発達障害者支援法に定義されていて、申し出があれば利用できる福祉や制度の説明や合理的配慮はしなければいけないと思いますが、残念なことにまだまだ認知は進んでいません。子どもの学校であれば2016年なのに親御さんが吃音の説明のため関係各位に走り回るという事案も発生します。菊池良和医師の書籍をわざわざ学校に持ち込んで説明する場合もあるでしょう。しかし、本来なら吃音がある旨を申し出れば、そこでスムーズに物事が進展しなければいけないと思いますし、ワンストップ面談で全ての先生と1回で話ができるようにならないとなりません。親御さんが仕事を休んで相手ごとに説明に奔走するということがすでに異常事態なのです。法律ができて11年も経過しているのに吃音は取り残されているのです。

 

2011年には障害者基本法などをはじめ、障害者に関連した法律が改正されました。これにより発達障害は精神障害に含まれると明文化されました。発達障害に吃音は含まれているので2011年以降は吃音者も精神障害者保健福祉手帳を取得できる条件は整っていたのです。

 

しかし諸事情や吃音当事者の考え方や受け入れ方の違いが影響し世間に周知されていませんでした。吃音はその症状の現れ方や吃音者ごとに程度が異なります。吃音当事者同士でも吃音に対する価値観、向き合い方や吃音をどのように受け入れているかは異なってくるのです。ラヴソングのホームページでも吃音には様々なタイプがあると説明しています。

 

吃音があっても何の問題もなく社会生活をしている人からすれば、吃音が障害だと言われ周知されることへ抵抗を感じる人もいます。吃音を障害だと考えていない人に困っている吃音者が障害者手帳を取得したいと相談すれば、それを阻止し諦めさせようとする人もいます。

学校でいじめられる人、いじめられない人がいます。不登校になる場合もあれば何の問題の無く通学している人もいます。幼少期にいじめや不登校を経験すればそもそも進学をしようという気持ちが折れてしまう人もいます。安心安全な環境で勉強できるようになっていないからです。就職活動も吃音をテクニックで上手くコントロールし就職する人、堂々と吃る方法で何の問題もなく就職する人もいます。しかし就職活動が吃音のせいで上手くいかない人もいます。筆記試験は突破できるのに毎回毎回、面接の後に貴意に添えない結果が送られてくる場合もあるでしょう。結果として引きこもりになっている人もいます。

世間でもごく一部に吃音に対する誤ったイメージを持っている人がいます。「吃音は緊張しているだけ」、「誰でもそうなるよ」、「私にもある 噛むよ」、「訓練すれば治るんでしょう」、「吃音は治すべき」、「吃音が障害だなんて甘え」などが挙げられます。

 

 

吃音が発達障害者支援法に定義されていることを知ってほしい

吃音者は障害者の法定雇用率にも計算できます

 

 

2013年に北海道で吃音看護師が自殺したというニュースをご存知でしょうか。全国ニュースとしては朝日新聞社が2014年1月28日、東京本社、西部本社、大阪本社にて北海道の吃音看護師が2013年7月末に命を絶ったと報道をしました。2013年のその日以降、北海道のローカルニュースや新聞社にて報道されていたことを改めて朝日新聞社が全国紙として報道したのです。TwitterなどSNSでも反響は大きかったように思います。ラジオやテレビでも取り上げられました。(※この北海道の吃音看護師自殺の詳細については、フリーライターの近藤雄生氏が取材をしているのでこちらを読んでほしいと思います。ホームページの「ARTICLES」タブをクリックすると『吃音と生きる』というシリーズ記事がPDFファイルで公開されています。内容はとても重いです。)

 

筆者の考えではありますが、吃音が発達障害者支援法に定義されていることがもっと早く周知徹底されていれば、この悲しい出来事は避けられたのではないだろうかと思います。筆者自身20代後半の社会人の時に「発達障害」の診断を受けました。その際、私を診断した発達障害に明るい小児科医(特別に小児科医を紹介してもらう)は、「よく、この年齢までたった1人で生きてきたね。吃音と発達障害は併発しやすいのにここまで頑張るなんて―。今後はあなたが望めば障害者手帳を利用する道もある。どうする?」と言われたことを今でもとても後悔しています。あの時にもっと発達障害者支援法を調べて熟読していれば、2013年7月以前に吃音は発達障害者支援法に含まれていると世の中に伝えるための行動をできたと思います。当時は自分の生命維持を最優先としていたため余裕がありませんでした。

 

吃音は発達障害者支援法に定義されています。幼少期から高校・大学までは吃音当事者や親が希望して申請すれば、障害者差別解消法も併用し合理的配慮を受けることができます。就職活動のときも同様に希望して申請すれば精神障害者保健福祉手帳を取得することができます。これで就労移行支援事業所(手帳が無くても可)や障害者雇用枠(手帳必要)を利用することができます。2018年4月より障害者法定雇用率の計算式が変化し事実上の精神障害者の雇用義務化も開始されます。官民問わず企業団体の総務・人事・労務・採用担当部門で働いている方には「障害者手帳を持っている吃音者も存在する。吃音は発達障害者支援法に定義されている」ということを知ってほしいのです。障害者の就労移行支援事業所を運営する団体の方にも吃音者にも対応した就労移行支援メニューを行ってほしいと思います。

 

しかし問題もあります。2016年現在、国内で吃音者に精神障害者保健福祉手帳申請書類を書いてくれる病院・医師はあまりにも少ないのです。実はアメリカ精神医学会が公開しているDSM-5という診断基準にて吃音は「神経発達障害Neurodevelopmental Disorder」に分類されました。吃音が発達障害かどうかの議論は存在しますが、現時点で法律によって助かる吃音者がいます。発達障害に明るい医師のみなさま、困っている吃音者のために協力していただけないでしょうか。本当に本当に困っています。法律上障害者手帳を取得できることになっていますが今度はそれを診てくれる医師が少ないのです。「私の病院は吃音も診療しているよ」と情報発信をしてもらえないでしょうか。当サイトのお問い合わせから筆者宛に連絡をください。吃音を発達障害として診療する病院リストを作成したいのです。

 

2016年5月25日、発達障害者支援法改正案が国会で成立しました。11年目の改正です。ごく簡単に解説すると、発達障害を治すのではなく共生できるように社会も国民も変化しましょう。また、当事者や家族が性別、年齢、障害の状態、生活実態に関係なくその時に必要な支援を選択して受けられるようにとも書いてあります。ライフステージごとに切れ目のなく行われるようにとのことです。吃音だけではなく全ての発達障害のある当事者・家族の選択肢が増えますように。

 

<参考サイト一覧>

◆メーガン・ワシントン: なぜ人前で話す恐怖の中で生き続けるのか

TED Conferences, LLC 

https://www.ted.com/talks/megan_washington_why_i_live_in_mortal_dread_of_public_speaking?language=ja

 

◆内閣府 政府広報オンライン 発達障害って、なんだろう?

http://www.gov-online.go.jp/featured/201104/

 

◆発達障害者支援法 2005年4月1日施行

http://law.e-gov.go.jp/htmldata/H16/H16HO167.html

 

◆17文科初第16号 厚生労働省発障第0401008号 【第2 法の概要 (1)定義について】 2005年4月1日

http://www.mhlw.go.jp/topics/2005/04/tp0412-1e.html

 

◆近藤雄生 ホームページ 

http://www.yukikondo.jp/

 

<当事者が語る>フジテレビ「ラヴソング」でドラマ化されたリアルな吃音(きつおん)

メディアゴンにて掲載された記事です。

http://mediagong.jp/?p=16802

 

4月11日フジテレビで、月9枠新ドラマ「ラヴソング」が始まりました。当事者として興味深く見ることが出来ました。ドラマでは、ヒロインさくらが「吃音」(きつおん[どもること])という障害をリアルに演じていました。ドラマを見た一般視聴者にも吃音当事者にも大きな衝撃を与えたことでしょう。

【続きはメディアゴンで】


<月9ドラマ『ラヴソング』>障害者差別解消法から見た吃音者への合理的配慮とは?

メディアゴンにて掲載された記事です

http://mediagong.jp/?p=16948

 

フジテレビで月9ドラマ『ラヴソング』が放送されています。「吃音」(きつおん[どもること])をラヴソングで初めて知ったという人もいるのではないでしょうか。

 

『ラヴソング』の中で「吃音者あるある」、「吃音者が困っていること」などが丁寧に描かれているため、吃音当事者の感想や意見が賛否両論に分かれて議論になる程のリアルなドラマになっています。

 

ドラマの中で中村真美(夏帆)と天野空一(菅田将暉)が吃音を持つ女性、佐野さくら(藤原さくら)と対話するシーンがあります。2人ともさくらの吃音に対しては一切反応をしません。筆者はこの状態が吃音者に対する究極の合理的配慮ではないかと感じました。 【続きはメディアゴンで】


【必読】はじめて吃音を知った人へ。吃音と関わる上で絶対に知っておくべきこと。大切な吃音ガイドライン

【必読】はじめて吃音を知った人へ。吃音と関わる上で絶対に知っておくべきこと。大切な吃音ガイドライン

この投稿は長文です。

読み終える時間は15分程度かかります。

 

http://kitsuonkenkyuguideline.blogspot.jp/2015/11/blog-post.html